2023年11月歌舞伎座で上演中の「マハーバーラタ戦記」を観てきましたので、簡単にストーリーや感想、オススメポイントをまとめてみました。ネタバレがあるかもしれませんがお読みいただいて、興味を持っていただけたら嬉しいです。
マハーバータラ戦記ってどんなお話?
マハーバーラタとは「偉大なるバラタ一族の物語」という意味で、世界三大叙事詩の一つと言われています。
神々は人間たちの争いを嘆きながらもその中ひとり、太陽神が救いの手を差し伸べます。
象の国の汲手姫に迦楼奈という子供を授け、慈愛の心をもって戦いを収める人間界の救世主として成長させようとしました。
しかし、恋すら知らない汲手姫は恐ろしくなって迦楼奈をガンジス川に流してしまいます。
そして太陽神と対立する戦の神である帝釈天は力をもって制圧することを使命とする、阿龍樹雷を汲手姫に授けます。
歳月が経ち、亜照楽多と羅陀夫婦によって育てられた迦楼奈は、天性の弓の才能を秘めた青年に成長しました。
ある日、太陽神から迦楼奈こそが救世主であると告げられ、使命を悟った迦楼奈は家を出て弓の修業に励むことを決断し、旅立つのです。
都では、王位継承争いが勃発しています。
迦楼奈も武芸大会に参加し、阿龍樹雷王子と対決します。
その様子を見た汲手姫は、自分が捨てた子供が迦楼奈であることに気づくのでした。
激化する争いに巻き込まれながらも、迦楼奈は自分の使命に向き合い、来るべき決戦に備えています。
同じ母を持つ兄弟として、異なる使命を背負って人間界に生まれた迦楼奈と阿龍樹雷が、ついに雌雄を決する戦いに挑むという壮大なスケールのお話です。
マハーバーラタ戦記の出演者は誰?
迦楼奈(かるな) シヴァ神(しん) | 尾上 菊之助 |
太陽神(たいようしん) | 坂東 彌十郎 |
仙人久理修那(せんにんくりしゅな) | 中村 錦之助 |
帝釈天(たいしゃくてん) | 坂東 彦三郎 |
百合守良王子(ゆりしゅらおうじ) | 坂東 亀蔵 |
風韋摩王子(びーまおうじ) | 中村 萬太郎 |
汲手姫(くんてぃひめ) | 中村 米吉 |
阿龍樹雷王子(あるじゅらおうじ) 梵天(ぼんてん) | 中村 隼人 |
納倉王子(なくらおうじ) | 中村 鷹之資 |
我斗風鬼写(がとうきちゃ) ガネーシャ | 尾上 丑之助 |
鶴妖朶王女(づるようだおうじょ) ラクシュミー | 中村芝のぶ |
沙羽出葉王子(さはでばおうじ) | 上村 吉太郎 |
森鬼獏(しきんば) | 尾上 菊一郎 |
森鬼飛(しきんび) | 上村 吉弥 |
道不奢早無王子(どうふしゃさなおうじ) | 市川 猿弥 |
亜照楽多(あでぃらた) | 河原崎 権十郎 |
羅陀(らーだー) | 市村 萬次郎 |
多聞天(たもんてん) | 市川 團蔵 |
大黒天(だいこくてん) | 坂東 楽善 |
那羅延天(ならえんてん) | 尾上 菊五郎 |
多聞天の市川團蔵さんが休演となり市川 荒五郎さんが代役を勤めておられます。
マハーバーラタ戦記の見どころと感想
両花道 花道がふたつある
お芝居が始まる前、会場に入って驚くのが花道が2つあるという事です。
舞台に向かって左側(下手)に花道があるのはいつものことですが、このお芝居は右側(上手)にも花道がありますので役者さんが両方の花道を行き来しますし、花道の上に勢ぞろいしてセリフを言い合うシーンもありますのでより立体的なお芝居になります。
神々しい金ピカの神様たち
幕開きで那羅延天の菊五郎さんをセンターに、シヴァ神、太陽神、帝釈天、梵天、ラクシュミー、多聞天、大黒天の神様たちが正面を向いて居並ぶ姿は壮観です。
全員金ピカの豪華な衣装に身を包み神殿のようなところにいらっしゃいます。
そのお姿は、ありがた過ぎて待ち受け画面にしたいくらいです。
イケメンの迦楼奈と阿龍樹雷王子
迦楼奈は尾上菊之助さんが、阿龍樹雷王子は中村隼人さんが演じられます。
お二人ともお顔立ちが素敵で、歌舞伎界でもトップクラスのイケメンです。
その二人が対立し争うのですが、舞台上での戦闘シーンは壮観です。
また、花道を使ったシーンではいつもより近くでお顔が見られる演出ですので、二人のイケメンを観ているだけでも目の保養になります。
中村芝のぶの熱演に泣ける
中村芝のぶさんは、金ピカの神様のひとり、美をつかさどる神様ラクシュミーと、迦楼奈と同盟を組んで王族の後継争いを繰り広げ自らも戦いに挑む鶴妖朶王女を演じられます。
神様と悪女の演じ分け、声のトーンで場面場面の空気をコントロールするような中村芝のぶさんが美しくてカッコイイ、そして哀愁。
相手陣営を打ち滅ぼすためにぶっ飛んだ悪だくみをするシーン、赤の甲冑を身に着けて戦いに挑む超かっこいいシーン。
特に終盤のセリフには泣かされます。
今戦争が行われているこの地球の人々に聞かせたいセリフです。
演出と音楽が素晴らしい。
歌舞伎の場合、三味線や太鼓、鼓など邦楽の楽器を使ってBGMや効果音が表現されますが、マハーバーラタ戦記の場合はそこに、インドの楽器や民族楽器、エスニックな香りのする楽器が使われていて、その音にとても癒されます。
このお芝居のサウンドトラック盤を出してほしいなぁ
しかも、演奏されている姿がオープンになっているのです。
演奏の方々の仕事振りや楽器が目に見えるのでそこもまた見どころ、聞きどころだと思います。
そしてダイナミックな演出、戦いのシーンが壮大に演出されていて「これ歌舞伎?」どうやったらこんな趣向を思いつくの?と思ってしまいました。
演出をされた方の引き出しの多さというか、奥深さにどんどん引き込まれます。
長丁場のお芝居ですが全く飽きることなくお芝居に入り込むことができます。
「マハーバーラタ戦記」の公演情報はこちらをご確認ください。
まとめ
2023年11月歌舞伎座で行われている「極付印度伝マハーバーラタ戦記」を観た感想と私なりにオススメしたいポイントをまとめてみました。とにかく楽しくて未来への希望を感じる歌舞伎でした。そして、現代を生きる私たちが力で相手をねじ伏せるような戦いに「NO」を唱えないとと感じる作品です。お読みいただきありがとうございました。
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